『フーちゃんはなかなかおりこうさん盲導犬です』

 突然降りだして、ドシャバシャ降っている雨の中を黙々と一緒に歩いてくれるのは、私の5番目の盲導犬フローラ、フーちゃんです。
 雨降りの日で思い出すのは、3番目の盲導犬ペリラのことと4番目の盲導犬ウランのことです。
ペリラはとにかくタクシーに乗るのが大好き、ちょっとでも雨が降り始めるとすぐに後ろを振り返って、振り返って、「お母さん、はやくはやくタクシーとめてよー!」って、私が右手を挙げるまで振り返り続けるのです。
 歩道に寄せて車が止まっていて、そのドアが開いていようものならば、大急ぎでそこに乗り込もうとします、ペリラにとってそういう車は無条件にタクシーなのです。
 そして盲導犬ウランは雨降りが大嫌い、ほんの少しの雨でも自分の顔がぬれるだなんてゆるせないわの盲導犬なのです。
マンションの玄関を出てほんの数歩歩いたところで、私に気づかれないようにクルリッと回転、逆戻りをして、またまた玄関の中に入って行こうとするのです。
だからほんの少しでも雨が降っている外出では盲導犬ウランは要注意ウランとなってしまいます。
 それなのに5番目の盲導犬フーちゃんは、「なんだ、この雨は!平気平気」とばかりにグイグイと前へ、前へと歩きます。
ぬれたってへっちゃらよ、だってうちんちのお母さんが後で乾いたタオルでふいてくれるもんって意気揚々の雰囲気です、とても頼もしくて、おりこうさんな盲導犬フーちゃんです。
それまでの「フーちゃんたら?!」とか、「フーちゃんたら?!」とかって言っていた気持ちはすべて帳消し、吹き飛んで、「フーちゃんはやっぱりおりこうさんだよねー!」ってことになるのです。

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