東欧・プラハへの旅 NO.12 第3日目

 トラムに乗るためにまた大きな通りに私たちは出てきました、ここからはショッピングモールに立ち寄っておみやげなどのお買い物タイムです。
横断歩道を渡るときに耳慣れない「トン、トン、トン」という音が聞こえるのです、それは第1日目の夜遅い居酒屋さんへみんなで夕食を食べに行ったときの横断歩道でも、昨日のプラハ城周辺の横断歩道でも、同じくこの「トン、トン、トン」という音が通りを横切るたびに聞こえていました。
しかし昨日までは気忙しくて、その音さえもそれほど気にもならずにいましたが今日は全てがスロータイム、空には秋始まりの雲がポカーッと浮かんでいて晴天ということはないものの肌をなでる風には生まれたての秋のにおいがして、気持ちにも余裕があります。
「あの音はなんだろう?!」

私は聞き耳をたてながら、ウランとその音の方へ近づいてみますと、それは横断歩道の歩行者用信号のところから出ている音でした。
その「トン、トン、トン」の音が次第に早くなって「トントントン」と、そして最後の音はもっと短く急テンポでの「トントントン」とリズムが4段階ほどに変るのです。
この音の変化は日本でいうならば、信号待ちの時間が過ぎるごとに信号機にある小さな丸いマークが消えていくのと同じことで、《ユックリユックリで歩いてもOk》、そして《少し急いで》、最後は《とにかく急げー!》のことなのです。
「これっていいわねー、目の見えない私たちにも、後信号がかわるのにどれくらいの余裕があるのかがおおよそわかって」
私が言いますと、うっちゃんも、ミセスKも、「そうね、日本ではこんな信号が変わるまでの変化を音でしらせるなんてことないものね!」と、あるいは「あれじゃあ目の見えない人には不親切かもね!」と、うなづき合います。
「それにさ、あっちこっちで信号のメロディが違っているより、こういう信号機の音が統一しているのも、またわかりやすくていいかもねー」
「そうそう、この方が目の見えない人にとって実用的だわね!」
傍らのウランが「えーーー!まだおしゃべりがつづくの?」とあきれはてるまで私たち3人はこの横断歩道で、その警告音に感心してのおしゃべりをしながらとりとめもなくそのリズミカルな音を聞いていたようです。
「なんだかユーモラスな音よね」
うっちゃんは音楽教師らしい感想をもらします。
「日本の大きな交差点では、あっちの横断歩道では小鳥の《ピヨピヨピヨ》が、こっちへの横断歩道では《とーりゃんせ》のメロディがで、ごちゃごちゃだものね、少々センスに欠けるかもね!」と私がニガく笑いながら言います。
そして私たちはその「トン、トン、トン」の音に合わせてゆっくり横断歩道を渡って、「いざいざ、ショッピングモールへ!」で、そちらへ確実に向かうトラムに乗り込みました。
 入口に若者たちが、やや初老のご夫婦らしきカップルが寛いでコーヒーを飲んでいるスターバックスの前を通り過ぎて、その横の入口へ向かいます、このプラハでは1番大きなショッピングモールに入ったのがジャスト12時でした。
「とにかく何かを食べてから、買い物タイムとしましょう」というミセスKにしたがって、どこにでもありそうなフードコートで、好きなものを少しづつチョイス、それでランチをということになりました。

ショッピングモールのランチといったならばだいたい世界共通なもののようで、《パスタ》、《ピザ》、あるいは《サンドイッチ》、《ハンバーガー》となって、そこに《サラダ》に《各種飲み物》などが加わるワンパターンです。
そしてその味もほぼ世界共通なもので、おいしくもまずくもないといった、ワンパターン味です。
ところがこのショッピングモールのフードコートにはなんと《回転ずし》があるのです、これには私たちは本当に驚きました。
それにもっと驚くことにその回転ずしコーナーに並ぶ行列が1番長いのです。
ミセスKが「日本の回転ずし、おそるべき!」と言ったので、私など本当に納得納得で大きなうなづきを何回も繰り返してしまいました。
しかしさすが日本人の私たち、プラハの回転ずしがどれだけ人気でも、ここは東欧チェコ、日本から遥か離れたプラハのフードコートです、どんなに逆立ちしたって「おいしいわけないでしょ!」でした。
それでイタリアンの列に並んでランチはピザとパスタ、それにサラダとドリンクはコーヒーのセットを3人で分け合って食べることにしました。

食べながら、飲みながら、またまたしばらくのおしゃべりを続けました、本当に足元でダウンしているウランが「どうなっちゃってんのさ!?」とあきれ返るほどにでした。
だから「さあランチタイムおしまい、おみやげをですよー!」とミセスKが掛け声とともに彼女はピョンと立ち上がって、ずいぶん長い、ながーい《のびのびー!》をしました、それはまるで「ああ、いっぱいなおしゃべりだったわねー、わたしあきちゃったわ!」と言っているかのようでした。

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