朝6時を待ってウランと洗濯物でふくらんだリュックを背中に洗濯室へ階段をあがってゆきました。連日のこの暑さ。誰もが汗だくで洗濯機の争奪戦ははげしいのです。4台あるのですがすぐに全てが一斉に回りだします。

ウランは階段が大好き。だから目覚めたばかりだっていうのに元気いっぱい、タンタンタンと2人の足音もなかなか快調……、ところが……、1番上の段に2人の足がかかって「ストレート・ドア」と指示の言葉をと思った瞬間でした。

「ワワーン、ワワーン」

ウランが吠えたのです。ななえおばさんびっくりぎょうてんの巻き。

「ノー！」ととっさに叱ったものの、あまりの驚きで階段から転がりそうになりました。洗濯室から「あれー、おどろかしたかなー」とのんびりした声。誰もいないと思っていたらすでに先客Oさんが洗濯開始していて、私たちの足音で誰が上がってきたんだろうかと顔をのぞかせていたのです。その彼の顔を見てウランちゃんはびっくり、吠えてしまったという顛末だったんですが……。

「Oさんってさあ、びっくりするような顔をしているの？」

「そうかなー、女の子がキャーキャー言ってくれたこともあったけど、今はどうかなー」

ななえおばさんは後でウランによーく言って聞かせました。

「ウランちゃん。女の子はやたらに驚いたりしてはいけません」と。