『秋の花の匂いがすてき』

 街を歩いているととてもすてきな花のにおいがただよってきます、『金木犀」の花のにおいなんです、でもキョロキョロ辺りを見渡してもそれらしいあの黄金色の小さな花の姿はありません。
この強烈な花の香、秋の深い空気の中に染みわたって、「ああ、秋が深まっているのね」とあらためて思います。
母危篤の知らせで京都の老人サナトリュームにかけつけた時、この花のにおいがただよってきて、「お母さんは秋に天国へ旅立って行くのね」と思わずつぶやいたのはもう20年も前の事になります。
そしてこの金木犀の花の香りをトイレのにおいと言って私をがっかりさせた姪も亡くなってすでに何年過ぎたのでしょうか、指折り数えて遠く離れて逝ってしまったわねーとつぶやきます。
私の育った家には、小さな金木犀の木もありましたが、植木鉢に入ったくちなしの木もありました、春は爛漫に咲きますが、秋のくちなしはほんの小さな花をつけて、それでも精いっぱいすてきな香りを漂わせてくれます。
2020年はコロナウィルスで日常生活もままならない中を春も、夏も飛び越えて、いまは深まる秋の中で、フローラと一緒に歩きながらその足を止めて花の香りを楽しむ、そんな生活が戻って来て本当によかったと思います。

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