2006年9月、渋谷シネ・アミューズでの上映をスタートに映画「ベルナのしっぽ」が全国主要都市圏に向けていよいよ広がってゆくことになりました。
私がこの「ベルナのしっぽ」を自主出版で1冊の本として某出版社から初めてだしましたのが1996年のことでした。それから1年ほど後で市民運動としてベルナのしっぽを映像化して社会の中で、地域の中で子供たちと一緒に見て、そのことで子供たちの心を育てるきっかけ作りにできないだろうかという企画立ち上げでしたので、ほぼ9年間『ベルナのしっぽ映画化』の重い旗をかかげ続けての私の日々でした。この夢の旗は時に「希望」という風を受けて力いっぱいにはためき、心躍るような楽しさもありましたが、時につらくなるほどの重圧に耐えなければならないこともありました。そんな中で、日本各地を訪ねた時いただいたみなさんからの夢の旗への「熱い想い」が、私の心にいつでもありました。くじけそうになる心を支えてくれたのはその想いを無二してはいけないという私の「日本のおばさん根性」だったと思います。
昨年8月、イマジカスタジオで映画関係者の初めての試写会に出席しましたが、とにかくここまでたどり着いたという気持ちいっぱいで、何が何だかわからないうちに映画は始まって、そして気がついた時には終わっていました。昨年秋、東京六本木での東京国際映画祭「日本映画・ある視点部門」での「ベルナのしっぽ」一般上映で初めてストーリーを追いながらしみじみとした思いで最後まで見まして、思いました。「まあ、なんて良い映画なんだろうか?!」と。そうしたら滂沱のように涙が流れて、後から幹太とペリラに笑われるほど泣いてしまいました。
今振り返れば過ぎていったほぼ9年の夢の旗を掲げての日々は未熟だった私の心の成長を呼び覚ます課程だったのかもしれません。とにかく夢の旗は一応映画となって結実して、全国順次ロードショーという大きな実をつけてくれました。本当に心からホッとしています。
1994年、ベルナが亡くなって、そして夫が亡くなって、今年で12年の月日が過ぎてゆき、先日我が家では13回忌の法要をおこないました。お墓の前に額づけば「お母さん、よーくここまでがんばったね、えらかったよ」と言ってくれる穏やかな夫の声が、そして「お母さん、わたしたちのこと映画にしてくれてありがとう」というベルナの、ガーランドのしっぽを力いっぱい振る音が聞こえてきそうで、ついついお経の流れているひととき涙ウルウルになってしまいました。
この長い道程をグチひとつこぼさずにいつでも私の傍らにいてくれたペリラに心からの感謝の気持ちを込めて優しく頭を撫でてやりたいと思います。そして日本全国たくさんのみなさんにこの映画を見ていただくことを、そしていつまでもみなさんの心の記憶に残る映画になってもらえることを、心より祈りながら、掲げ続けてきた夢の旗を下ろすことにします。
2006年6月 梅雨の晴れ間の日に
「ベルナのしっぽ」
白石美帆 市毛良枝 田辺誠一 他
監督:山口晃二
9月中旬より渋谷シネ・アミューズ他全国順次ロードショー
配給:シネカノンパブリッシャーズ
公式ホームページ http://www.bsproject.jp
「ベルナのしっぽ」原作/郡司ななえ
(ナナ・コーポレート・コミュニケーション刊行)
主題歌:広瀬香美「情熱+」(ビクターエンタテインメント)
日本/2005/カラー/102分/35mm/ヴィスタサイズ/DTS-SR
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