『やまぶきの花』

 桜の花が散り始めてつつじがこんもり赤く花盛りとなります、そうすると私の育った家の庭には「やまぶき」の花がみごとに咲きはじめます、もちろんその色合いは黄金色(こがねいろ)、グリーンの葉の中に埋まるように黄色い花の色が映えて、きれいです。
 雪深い私の育った地では、雪解けがはじまると、一気に春から夏へと自然界は大忙し、たくさんの花々がつぎつぎに咲き競って目まぐるしいほどとてもきれいです。
 私の『七重』という名前は当時とてもめずらしくて、子供心になんで子がつかないのよーと不満に思ったものです。
そして名前でからかわれる時には常に太田道灌さんのこの歌でした。
《七重八重 花は咲けども やまぶきの みのひとつだに なきぞかなしき》
高校生時代、私はこの道灌さんの歌にお返しの歌をつくりました。
 《やまぶきは ちいさき花に思い秘め 色鮮やかに 咲きて寂しき》
 何年か前のこと、川越市を訪ねましたら、太田道灌さんの銅像がありました。
「ほーら、お母さんの名前の殿様よ」と盲導犬になりたてフーちゃんに言ったら、「そんなのきょうみないもん」とそっぽをむかれてしまいました。

ページの先頭へ
前のページに戻る