南フランス・フロバンスへの旅 NO.9 第2日目(8月7日)

 今回プロバンス滞在中5泊する私たちの借りた部屋の間取りは、キッチン・リビング・ダイニングを除いて、居室3部屋、それにトイレルーム、バスルームというもので、ガスレンジや電子レンジはもちろんのこと食器洗い機と洗濯機、それに乾燥機が備わっていて、短い旅行期間を過すには実に機能的なものでした。

私とうっちゃんがひとつの部屋で、そこは玄関を入ってすぐ右ドアの部屋で、外の通りに向いて開く窓ガラスがありました。
それでもベッド2台を入れると、それだけで本当に床面積があまり無いという状態でした。
私はドアに近い方のベッドを取りました、そしてその足元にフローラのシーツを敷いて、「ここがフーちゃんのハウスだからね」とおしえましたが、彼女はその隣のもともと敷いてある敷物がどうも気になってしかたがなさそうなのです、だからそっちへ行ったり、私が敷いた彼女の敷物の上に来たりしていました。
今回利用するアパートメントハウスの間取りで唯一とても困ったことは、ティーチャー・エミコの部屋にだけしかベランダがついていないということでした。
それでこのアパートメントハウス滞在中は、フローラのワンツータイムの時は、どうしてもティーチャー・エミコのベッドルームを横切ってでなければベランダには出られないのです。
そしてこちらもそれほど広い部屋ではないところに、ベッドがあり、ソファーまでありますから空いている床面積がそれほどある訳でもなさそうです。
「どうしようか・・・・、床の上に置いた衣類を踏みつけてでは困るものねー」と思案する私に、ティーチャー・エミコがにこやかに笑って「私ここで宣言をします」と言いました。
「今回私がこのマンションに居る時の、フーちゃんのワンツー係りになります」
そんなこんなで今回の5泊滞在中ワンツー係りは、ベランダに付随する部屋の利用者・ティーチャー・エミコとなってしまいました。
 このフローラのフロバンス滞在中のワンツーの様子が真にユーモラスなまでもフローラの現実主義者が露呈されて、笑ってしまう結果になりました。
というのは・・・・・。
このアパートメントハウスに居る間は、フローラはワンツーをもよおすと迷うことなくティーチャー・エミコのところに行くのです。
「さあ、ワンツータイムにゆきますよー、着いて来てください!」とばかりにです。
そしてティーチャーエミコとベランダに出て、腰に巻いたベルトのビニール袋の中にそれを出して、始末してもらうや、一目散に私のところに快調なステップを踏みながらやってくるのです。
お世話をしてもらったティーチャー・エミコのことを振り向くこともまったく無いままにです。
「でたよ!おかあさんでたからね!」
わき目も振らずに、一目散にです。
「これじゃあ私は単にフーちゃんのワンツー係り、それだけなんだねー」と、さすがのティーチャー・エミコはにがく笑うのでしたが・・・・・・、そこはすでにフローラは出るものは出したし、一休みするかなーの心境なのでしょう。
 こうして部屋割りが終わって、ひとまず持って来た荷物をそれぞれの部屋に落ち着けてから、私たちはティータイムのひとときを、ダイニングテーブルで過ごしました。
まず日本から持って来たお茶のティーパックで日本茶の良いかおりを楽しみながら、「ここにおせんべいでもあれば、まるで日本だわねー」と笑いあいます。
それからうっちゃんがいつもの旅行の時のように、飛行機内の食事についてきた調味料を回収します、塩、こしょう、ケチャップ、マヨネーズ、お砂糖、ミルクなどなどですが、これは今夜から始まる家食の良い味付け材料に使われるのです。
一休みした後うっちゃんとミセスKとティーチャー・エミコの3人で滞在中の食料品買い出しに、それぞれ大きな布の袋を持って出かけることになりました。
私とフローラは自室で少し休憩タイムです。
すでに時計は夕方6時になろうとしていますが、まだまだ日中のような明るさで、開け放った窓からはとても夕暮れの気配など漂ってきません。
フローラは私が日本から持って来た敷物などはググーッと片方へ寄せ集めて、もともとのこのアパートメントハウスの敷物の上でノワノワーと横たわって軽いいびきなどをかき始めました。
私はベッドにもぐりこんで、リンクポケットで本を読み始めました。
そしていつの間にか眠ってしまったようです、それもミセスKが言うような爆睡状態だったようです。
そして目覚めたのは、「ななえさんごはんだよー!」という声でです。
えー、あさなの?と跳ね起きますと、時計は現地時間8時を回っています。
買い出しに出かけていた彼女たちがもどってきて、料理を作っている音もまったく知らないままに眠り込んでしまったようです。
テーブルにはすでにおいしいにおいのお料理が並んでいて、フローラも私の椅子のところにおとなしくダウンしています。
「今夜のデナーはゆで豚そうめんで、色鮮やかなトマト・レタス、名前も知らない緑色のきれいな葉が、アパートメントハウスそなえつけの洋風どんぶりを飾っています、この料理人はうっちゃんです。

彼女の手際よい料理はとても素早くて、センスがよくて、その上すこぶるおいしいのです。
「ホーラななえさん、みてごらんなさいよー、とてもおいしそうなのよー!」と歌うようにティーチャー・エミコが言っています。
そして冷蔵庫の前にはミセスKが小腰をかがめて、今夜のワインを物色しています。
フロバンスのロゼワインを飲みながら和洋折衷の夕食に舌鼓をうって、話題はもっぱら明日の獣医さんの検診とマルセイユに出てのフランス公印を押してもらう、その段取りです。

 その真夜中、一眠りした後に私はそーっと起きて、隣のベッドのうっちゃんを起こさないようにそーっとバスルームに向かいます。
フローラさえもグーグー眠っていましたし、どこからでも寝息が聞こえてきて、とても平和な夜更けです。
湯船にお湯をはって、その中に全身を伸ばして温めます。
私にはまだ失明の原因となったベーチェットの後遺症が残っていて、こうして体を温めることによって手足の関節のこわばりを取り除く必要があるのです。
静かにしばらく沈思黙考、はるばるフランスまで、まったく夢みたいな話が現実になってくれたものだわとしみじみ思います。
先ほど買い出しに出かける時にミセスKにわすれないでねと頼んだシャンプー液を頭にふりかけて、盛大に洗髪、そして棚のところにあるさいころ状の石鹸に手がとまりました。
「ああそうか・・・・、これが夕食の時にテーちゃーエミコが話題にしていた『プロバンス石鹸』なんだなー」と思いながらしばらくそのずっしりと重い、about12センチメートルほどの正方形、さいころ型の石鹸を眺めていました。
ほとんど無臭でとても素朴な雰囲気の石鹸なのですが、私は思いました、「この石鹸を使いきるのに何年かかるだろうか?!」とです。
1センチメートルが6か月と仮定して、ほぼ6年です、ここから6年が経てば・・・、私は後期高齢者の仲間入りとなっているはずです。
そのころには、そしてそのころまでには・・・・、どんな日々を送っているかしらねーと楽しい想像が広がります。
夢は決して悲観的なものをもたらしたりはしません、次から次へと心はずむロケーションばかりが頭に浮かんできます。
そして唐突に私はプロバンス石鹸を手に持ちながら「そうだわ!」とグッドアイデアを考え付きました。
「このプロバンス石鹸を自分へのおみやげに買って帰ろう」とです。
「なーんてすてきなアイディアだったかしら!」と、思わず真夜中のバスルームで微笑んでしまいました。
そして思い出しました。
数年前のことでした、スイスに旅した時、グリンデルワルトのアパートメントハウスのトイレルーム、真夜中トイレで用をたしながらトイレットペーパーにえらく感心したことがありました。
それでスーパーマーケットでトイレットペーパー4ロール一袋を自分へのおみやげに買って、トランクに詰め込んで帰ってきたのです。
「おみやげって旅したその国で1番感心した物、すてきだった物、気にいった物を買えばいいんだものねー」
真夜中のバスルーム、プロバンス石鹸を手に、うんうんそうだよねーとうなづいている私でした。

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