南フランス・フロバンスへの旅 NO.3 第1日目(8月6日)

羽田空港上空に翼を広げてエールフランス機が飛び立ったのは予定時間の22時55分をやや回ってからでした、しかし上空は見通しが良いのかすぐに水平飛行にはいりました。
始めての飛行機のフローラはグーッと上昇していく時に、「あれー・・・?!」とばかりに顔を挙げて「不安、不安不安不安・・・・」と私に訴えていましたが、頭を「だいじょうぶよ!」と指先でトントンたたいてやると、気持ちが落ち着いてくれたようで、前足に顔を乗せて正式ダウンのポーズとなりました。

でも通路を挟んだ隣の座席に座るうっちゃんが言うことには、「やはりウランの方が落ち着いていたわ、フーちゃんはずいぶん驚いていたもの!」とのことでしたが、私は「そうかなー、若葉マークでこれくらいの反応だったら、まずはごりっぱ、りっぱなものよ」と応えました。
というのは、かつて国内線の機内で立ち上がって、飛び跳ねそうになった盲導犬と遭遇したことがあったからです。
その時は気流の関係だったからでしょうか、上昇していく機内がユラユラ揺れて、さすがの私の娘も「えー!」とばかりに顔を挙げて私をジーッと見ていましたので、乗り合わせた盲導犬たちはどの子も不安感いっぱいだったのでしょう、しかしそれに比べればフローラの顔を挙げて「あれー?!」とキョロキョロするくらいはどうってことのない反応です。
水平飛行にはいってシートベルト外すことOKサインが出たところで私はただちにトイレの位置をフローラと一緒に確認に出向きました。
通路を後方に動いてカーテンを手で触れたら、そこにはトイレが横並びで2か所ありました。
それからまだ後方へ通路を歩いて行きますと、通路が微妙に狭まった感覚があって、そこが最後尾近くになって、ここにはやや広めなトイレがありました。
一緒に着いてきてくださったやや年配のアテンダント係りの女性に「ありがとうございました」とお礼を伝えました。
この方は日本女性で、この飛行機には日本人のアテンダント係の女性が二人乗っているようでしたが、どちらの女性も落ち着いていて、ベテランという雰囲気でした。
「トイレの位置がわかったので、真夜中でもこれで誰にもお世話にならずに自由に用を足しに向かうことができて、とても助かります」と言いますと、実ににこやかな笑顔で「どうぞご遠慮なさらずに、いつでもスイッチボタンを押して、私たちをお呼びになってくださいね」と言われました。
そしてフローラと座席にもどって来ると、それを待っていたかのように機内食タイムとなりました。
飛行機の機内サービスは実に律儀なもので、夜中の23時を過ぎてほとんどの人たちがすでに夕食をすませて乗り込んできたことが時間的にわかっていても、まずは夕食をということなのです。

肉中心メニューは牛肉のデミグラスソース煮と小タマネギ、それにジャガイモのソテーとパンで、通路を挟んだ隣のシートに腰をかけたうっちゃんがそれをセレクトしました。
そして魚中心メニューは眼張、から揚げ生姜煮と卵焼き、そしてごはんでした、これはミセスKと私、それにうっちゃんの向こう側に座るテーチャー・エミコが選びました。
もちろん私たちはドリンクはワインをお願いしました、ミセスKは白ワインで私は赤ワイン、これはいつでもほぼきまったパターンなのです。
「眼張は漢字表記では目を張ると書くのだけれど、でも配られたメニューには『メバル』とカタカナ表記だわ」とミセスKがおしえてくれました。
魚の中でもきっと大きな目のクリクリしたかわいらしい顔をしている魚さんなんでしょうと私は思いました、から揚げも生姜の香りがピリッと口の中に広がって、とてもおいしかったです。
そしてわが家の眼クリクリの娘はやはり空をフワフワではおちつかない気持ちなのでしょうか、機内はほぼ揺れもないのに私の足元でモゾモゾしています。
「だいじょうぶよ、なーんにも心配はいらないんだから、フーちゃんはゆっくり眠っていていいのよ」と言いながら、私は食後のコーヒーを飲みました。
 最近時々狭いところに入るとパニック症候群がやってきそうになるのです、まだ本格的にその発作が起きたわけでもないのですが、でも時には危ういなーと、これじゃあ私の『てっちゃんおばさん』の名前も返上しなければいけないかもねーと、思うことがありました。
数か月前の新幹線に乗った時に「あらー・・・、どうしたんだろうか?!」という気分になって、それからとても乗り物を長い時間使う時には、気持ちの中に不安感が漂うような雰囲気になるのでした。
それで今回はかかりつけの内科のドクターに相談して、すぐに眠ってしまうようにと、睡眠薬を先に飲んでから食事をするということになっていました。
それでも眠るタイミングをうまく捉えなければとやや焦っている気持ちがありました。
だから足元のフローラにもぞもぞ体を動かされては気が散ってせっかくの睡眠薬の効果が出ない、そんなことになってしまっては一大事です。
「さあフーちゃん、目が覚めたら、シャルルドゴール空港、フランスだよ、そうしたらごんごんも食べられるし楽しみだねー」と言いながらブランケットを肩まで引き上げて、私は深く深呼吸を何回か繰り返して、本格的な眠りの体制を整えました。

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